風薫る
「…………」
木戸さんは無言で納得していないと主張した。
こうなったら最終兵器。
「本、落とすと傷むよ」
「っ」
途端、喉を詰まらせた木戸さんに、渋々ではあるものの、何とか納得してもらうことに成功。
よかった。
「次、何か取るのある?」
「や、大丈夫……あ」
一瞬首を横に振りかけた木戸さんは、はた、とその動きを止めて。
「――っていう本。著者名と出版社名は忘れてしまったんだけれど……」
おずおずと切り出された本の題名を知っていた。
著者名も出版社名も、内容も知っていた。
挿絵が綺麗だった覚えがある。
確か、何年か前にどこかの新人賞の、奨励賞か何かを受賞したと雑誌で見かけて、試し読みをして、衝動買いをした。
あまり有名ではないけど、文章が綺麗で読みやすいのがお気に入りの本だ。
「それなら俺が持ってるけど、貸そうか? その方が借りられる上限から一冊ぶん浮くし」
「え、本当? 借りてもいい?」
「もちろん」
「ありがとう!」
ふわり、あまり嬉しそうに笑うから、思わず本を落としかけてしまって。
だから。
木戸さんは無言で納得していないと主張した。
こうなったら最終兵器。
「本、落とすと傷むよ」
「っ」
途端、喉を詰まらせた木戸さんに、渋々ではあるものの、何とか納得してもらうことに成功。
よかった。
「次、何か取るのある?」
「や、大丈夫……あ」
一瞬首を横に振りかけた木戸さんは、はた、とその動きを止めて。
「――っていう本。著者名と出版社名は忘れてしまったんだけれど……」
おずおずと切り出された本の題名を知っていた。
著者名も出版社名も、内容も知っていた。
挿絵が綺麗だった覚えがある。
確か、何年か前にどこかの新人賞の、奨励賞か何かを受賞したと雑誌で見かけて、試し読みをして、衝動買いをした。
あまり有名ではないけど、文章が綺麗で読みやすいのがお気に入りの本だ。
「それなら俺が持ってるけど、貸そうか? その方が借りられる上限から一冊ぶん浮くし」
「え、本当? 借りてもいい?」
「もちろん」
「ありがとう!」
ふわり、あまり嬉しそうに笑うから、思わず本を落としかけてしまって。
だから。