風薫る
しばらく会えない日が連なって、寂しいなあとか、会いたいなあとか、勉強するかたわらで、ぐるぐる考える。
初めての意外な負荷に驚いているのは、むしろ私。
無意識に足が図書室に向きそうになって困る。
黒瀬君と会えない平日なんて滅多になかったから、知らなかった。
寂しさが心に根を張って、寂しくなる度、待ち遠しくなっていく。
寄せては引く寂寥感に増えた溜め息。
約束を思えば容易く止まるそれらを、現金だな、と他人事のように思う。
自分から言い出したことなのに、やっぱり寂しい。
「……黒瀬、君」
会いたいなあ。
小さく小さく、五つの文字に音をのせる。
彼の名前は次第に空気に溶けて薄れた。
初めての意外な負荷に驚いているのは、むしろ私。
無意識に足が図書室に向きそうになって困る。
黒瀬君と会えない平日なんて滅多になかったから、知らなかった。
寂しさが心に根を張って、寂しくなる度、待ち遠しくなっていく。
寄せては引く寂寥感に増えた溜め息。
約束を思えば容易く止まるそれらを、現金だな、と他人事のように思う。
自分から言い出したことなのに、やっぱり寂しい。
「……黒瀬、君」
会いたいなあ。
小さく小さく、五つの文字に音をのせる。
彼の名前は次第に空気に溶けて薄れた。