風薫る
黒瀬君はもう頼むものが決まっているだけに、私よりもずっと落ち着いていました。


「あげてもいいが、あんまり急じゃありませんか。」と聞くのです。


私が「急にもらいたいのだ。」とすぐ答えたら笑い出しました。


そうして「よく考えたのですか。」と念を押すのです。


私は言い出したのは突然でも、考えたのは突然ではないというわけを強い言葉で説明しました。


「ほんとはね、ずっとずっと迷っててね、でも半分こしてなんて言ったらずうずうしいかなあとかね、」

「あ、そこは木戸さん本来の話し方で言うんだ」


お、という顔をするので、話しにくいことを伝えてみた。


使う言葉が難しくて昔っぽいんだもん。


「それにこのあと二つ三つ問答するのに、私はそれを忘れてしまいましたって続くんだよ。問答しないと」

「問答ね、何しようか」


うーんと二人で黙り込む。


問答、問答、何かなあ。


特に問答するべき事柄はないんだよね。私の疑問とかでもいいんだろうか。


「黒瀬君、これって私からでもいいかな」

「俺はいいと思うよ」


よし、じゃあちょっぴり違くなっちゃうけど、私からも何か質問を考えよう。
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