風薫る
というか黒瀬君、デザートも頼むなんてお兄ちゃんとは大違いだ。


お兄ちゃんたらほんと粗野なんだから、って……ええと、待って。もしかして、品種私に合わせてくれた?


洋食と和食だと、結構品物が来る時間が違う。


別段先に食べてもらっていいんだけれど、きっと黒瀬君は待っていてくれるし、そうすると私が微妙に気にするのも予測できるし。


クロワッサンサンドはともかく、食後のデザートはその線が強い。


いや、でも黒瀬君甘いもの好きかもしれないよね、うん。


……ここで聞いても好きだってしか言ってくれないんだろうなあ……。


ちらりと見上げると、うん? というように微笑んだ。


「黒瀬君。甘いものは好きですか」

「好きだよ。何、どうしたの。おかわりする?」


あれだったら半分ことか一口とかあげるよ?


さらりと続けた黒瀬君に確信する。


うう、黒瀬君、お金を浪費しなくていいのに。君はさりげなく気を使いすぎだよ。


うーうー唸っていたら、黒瀬君は私の異変に気づいてすぐにその理由を理解したと見える。


「木戸さん」


黒瀬君が何気ない感じで、けれど確かな思惑を持って私を呼ぶ。


「うん」

「木戸さんと半分こしたいのは俺の勝手だから、気にしないでね」
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