風薫る
首をひねると、瑞穂も首をひねった。


「さあ。今まで見たことなかったんじゃない? 確か運動部の子たちだし、そうすると夜遅いでしょ」

「そっか、練習中に帰るから会わなかったのかな」

「昨日はどこも部活なかったからね」


普通はテスト最終日でも部活動できる。昨日は先生方が会議で、練習熱心な部活も珍しくお休みになった。

見られちゃったのはそういう訳だよね。


……見られちゃったというと、なんだか後ろめたい感じがする。

ぜ、全然後ろめたいことはない、はず……!


面倒なことになったねえ、と言葉を選びながら瑞穂が教えてくれた話は、こうだった。


――黒瀬君が好きって人は結構いるの。

告白するんだけど振られ続けて早一年、って人も少なからずいるのね。


でもいつかって諦められないでいたら、明らかに仲いい人を発見した、と。


で、やっぱり黒瀬君は人気がある人だから、噂が広まるの、地味に速かったらしくてね。


手当たり次第特徴話してあんただって特定しちゃった人とか、今まで騒いでなかった人が、あんたと黒瀬君が一緒にいるの見たことあるって証言しちゃったりとか、いろいろ絡んでね。


最終的に、あの二人付き合ってるんじゃない? って形に落ち着いたの。


「付き合ってなんか……!」

「そう見えたんでしょ」


お似合いってことだよ、なんて怖いことを言わないで欲しい。
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