風薫る
お似合いでも不釣り合いでもいいけれど、黒瀬君との関係を邪推されて読書できなくなるのは避けたい。


そんなことで話せなくなるのは、とても理不尽で不本意だ。


まあ問題はそこじゃないよ、と瑞穂がさらに爆弾を追加。


「今回、かなりの人があんたと黒瀬君が一緒に帰ってるって知っちゃったの」

「え? うん」


それがどうしたんだろうか。


「つまり、今まで知らなかった人はほとんど知ってると思っていい。あの黒瀬君の彼女だと思われてるんだから、注目は免れないはず」

「ええ……」


全然彼女じゃないので注目しないでください。


やだな、と苦い顔をすると、苦笑される。


「いろんなところであの人彼女らしいよって言われちゃうと思うけど、できるだけその場で否定しておかないと、物好きに尾ひれつけられて目立って余計に面倒臭さ倍増だからね。違うんだったらちゃんと否定するんだよ?」

「……頑張る」


くれた助言に、うわあ、と辟易した溜め息がもれたのは仕方ないと思う。


この学校は娯楽が少ない。


行事の物足りなさを補うように、面白い話題、こと噂には敏感な校風なのであった。
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