風薫る
「いや、そんな個人的すぎること黒瀬君に聞こうと思う人、怖すぎてなかなかいないと思うけど」


え、怖いの? ……黒瀬君が? なんで?


全然意味が分からなくて固まったら、えっ嘘、と逆に驚かれてしまった。


「知らない? 黒瀬君の、有名の意味」

「かっこいいからじゃないの?」


他に何があるんだろうか。てっきりあまりのイケメンっぷりに騒がれているものだとばかり。


「よーしわかった、ちょっと黒瀬君の印象を挙げてみようか」

「えっと、ファンタジーが好きで、優しくて、穏やかで、面倒見がよくて、かっこよくて、あとよく笑う人?」


指折り数えると、うん、と頷かれた。


「それ、実は皆が思ってるのと全然違うんだよね」

「え!?」


……どういうことだ。黒瀬君かっこいいよ。優しいよ。


全然違うということは、まさかまさかの、黒瀬君が優しくないということだろうか。

……いやいや、優しいよ黒瀬君。


まさか穏やかじゃないとか? かっこよくな……ええと、多分かっこいいのは共通認識なはず。ええと……?


混乱して固まっていると、あのね、と、瑞穂は言い含めるみたいにゆっくり言った。


「黒瀬君はね、物腰は柔らかいけど一歩踏み込めない人だから、有名なんだよ」
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