風薫る
「俺は木戸さんと一緒にいたいよ」

「っ」


心臓が、音をたてて跳ねている。


「木戸さん」

「……うん」


爪が食い込む手のひらと、うるさく鳴り響く心臓と、不思議と冴えた頭。


ゆっくり、自分の呼吸を三回聞いた。


「木戸さんを本当は巻き込みたくなかったんだけどさ。……かっこつけたくて、黙ってたんだけど」


でも、木戸さんが欲しいって言ってくれるなら。


「俺なんかのでよければ、いくらでもあげるし」

「……うん」

「俺だって、ずっと一緒にいたいし」

「う、ん」

「木戸さんの隣は俺がいいし」


まだ、何も言ってないのに、終わりとか嫌だし。


「だからさ」


黒瀬君が綺麗に笑った。


「木戸さんの放課後を、休日を、俺にください」
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