風薫る
「あのねえ、俺だって照れてるんです」


て、照れ……?


「じ、自分で言っておいて……?」


矛盾しているような気がしての呟きに、ものすごい速さの反射で返された。


「自分で言ったから照れてるんです」


そ、そっか。そうなのか。


微妙に敬語が混じり始めているってことはつまり、黒瀬君が、ものすごく照れているということだ。


なんだかもうこれ以上何も聞いてくれるな、とばかりに哀愁を漂わせる顔をそっと覗き込んでみる。


「じゃあ、ええと、やっぱり、私から、言う……?」


しどろもどろに伺うと。


「え」


ぴきり、盛大に固まった。

名前を呼んでも手を振っても動かないので、とりあえず放置して有言実行。


「ええと、ぎゅーってして欲し、……してもいいですか」

「して欲しいししたいです」


復活した黒瀬君が、私がするよりも早く、ふわりと抱きしめた。
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