風薫る
「ああいう告白っていいよねえ」


素敵なお話を思い出してにこにこする私に、にこにこしながら黒瀬君が聞いた。


「やっぱりああいうのって、嬉しいの?」

「私はすごく嬉しいよ。ああいう意外性はうまく当てはまると素敵だなって思う」


本に挟むなんて素敵。相手が絶対に見ると分かっていて、字とか状況とかから、絶対に自分が送った告白だと分かるのもいい。


だってそれは、言い方は悪いかもしれないけれど、確信犯ということで。明確な好意があるということで。


好きな人から向けられる「好きです」が嬉しくないなんてこと、ないよ。


なるほど意外性、と頷いた黒瀬君が、少し首を傾げて私を覗き込む。


「木戸さんはさ、どういうふうに言われたい? ……理、想の告白とか、ある?」

「え?」


見上げた先で、黒瀬君が、真面目な顔でこちらを見ていて。


どくんと、体温が上がる気配がした。


「うーん……」


どういうふうに言われたい、かあ。


ことん、と私も首を傾げる。うんうん唸り、悩んで、黙考すること数十秒。


「そうだね、ええと……」

「うん」

「……何でも、いいかなあ」
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