風薫る
「そうだね。そうだよね。好きになってくれたら、嬉しいものだよね」


矢継ぎ早な肯定は、ほんの少しだけ震えていて。告白の絶えない黒瀬君が、ああ、と何かに思い至った顔をして、ゆっくり顔を歪める。


……ああ、そうか。黒瀬君にとっての告白は、きっと意味合いが違ったんだね。


ね、黒瀬君。私、単純だから、告白されたら嬉しいよ。すごく嬉しいよ。

好きって言ってもらえたら、すごく舞い上がって、それだけで、すごくすごく幸せになっちゃうと思うよ。


「私ね、好きって言ってもらえたら充分なの」

「……うん」

「別にね、本が好きな人じゃなくてもいいけれど、本が好きな私が好きな人だといいなって」


だってそうしたら、私を丸ごと好きになってくれたってことでしょう。


私は空想と本好きと読書好きでできている。

本好きなところを見て好きになってくれたなら、私の大半を好きになってくれたと言っても過言じゃないくらい。


図書館で、鋭い視線や騒々しいおしゃべりをいくつも見た。

読書に興味がない人がいると知っている。無価値だと思っている人がいると知っている。


だからきっと、本好きを肯定してもらえるのは、とても幸せなことだ。
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