風薫る
「うん、もちろん」


即答した私を瑞穂が驚いて見つめた。


「……彩香って毎週図書室行ってなかった?」

「二日に一回は必ず行ってるよ」

「図書室ってだいぶ古めかしいよね? そんなに面白い本あるの?」

「あるよ。確かにこの学校の図書室は古めかしいけれど、広いぶんたくさん本があるんだよ」


それにね、とにこにこしながら付け足す。


「今月は新刊が二十冊も入ったんだよ!」

「そうなんだ」

「早く借りに行かないと誰かに借りられちゃうかもしれないでしょ!」

「……だねー」


私は熱弁を振るったけれど、上手く伝わらなかったらしい。


遠い目の瑞穂に悲しくなった。


読書は途中で眠くなると言って、瑞穂はあまり本を読まない。本人曰く、「かなり苦手。無理無理」だとか。


文章によっては読みにくいものもあるけれど、基本的に何でも楽しめる私には難しい考え方をするのだ。


「別に誰も借りないよ、むしろ行かないよ。勉強場所は校内にたくさん設置されているしね」

「そうかなぁ」


私はそんなことはないので、あまり実感が湧かない。


瑞穂は呆れたような顔をした。ほら、と微妙に諭す口調なのが悔しい。
< 4 / 281 >

この作品をシェア

pagetop