風薫る
……ええい、どうとでもなれ。


黒瀬君がかっこいいのは本当のことなので、勢いで頷く。


「そうだよ」

「嬉しい、ありがと」

「っ」


頷いたら、また綺麗に笑うから。そんな顔をするから。

可愛いなあとか、可愛いなあとか……!


くそう、ああもう本当に、黒瀬君のその優しい顔はずるい。


ずるい。


ぶわり、体温が上がる。


「…………」

「…………」


真っ先に私が撃沈して、追うように黒瀬君も途端に真っ赤になって撃沈した。


耐えきれずに二人で机に倒れ込む。


冷たさが熱い頰に気持ちいい。


「だ、駄目だああ……!」

「私ももう無理、駄目、絶対駄目……!」


これ以上はお互いに駄目だ。


机に突っ伏しながら、未だに熱い顔を持て余す。


「何でこうなったの……」


疲れたよ。


独り言のつもりだったけれど、律儀に返事が返ってきた。


「いや、木戸さんが無自覚に褒めるから、俺がどれだけ恥ずかしかったかを理解してもらおうと思ってですね。ほんとごめんね」

「ううん、えっと、その節は大変失礼しました……」


本当にすみませんでした。


謝ると、分かってくれてよかったです、と言われた。


はい。ごめんなさい。
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