風薫る
「あ」
「……あ」
ほとんど同時に呟く。余韻が重なった。
話すのに夢中で、昨日約束した本のことを完全に忘れていた。
今日集まった本来の目的はそっちなのに。
「持ってきてるけど、どうする?」
ええと、と時計を振り仰いだ木戸さんが目を剥いた。
「くくく黒瀬君、と、とりあえず出よう……!」
噛みまくる木戸さんの焦りっぷりと異様な迫力に押されて、慌てて歩き出す。
待っていても変なのでとにかくさっさと先に進んだけど、歩幅が違うから随分差がついてしまった。
廊下の壁にもたれて溜め息を吐いていると、木戸さんが遅れて廊下に到着。
扉を閉めて脱力する。
腕時計を確認すると、五時十分になろうとしていた。
……十分も過ぎちゃったか……ごめんなさい……。
……結構頑張ったんだけどな。
図書室で走るのは御法度なので、最大限に足を前に出して高速の早歩きをしたんだけど、さすがに一番奥の机からでは少し距離があったらしい。
軽く深呼吸をして隣を見ると、木戸さんがぜえはあ肩で息をしていた。
「……あ」
ほとんど同時に呟く。余韻が重なった。
話すのに夢中で、昨日約束した本のことを完全に忘れていた。
今日集まった本来の目的はそっちなのに。
「持ってきてるけど、どうする?」
ええと、と時計を振り仰いだ木戸さんが目を剥いた。
「くくく黒瀬君、と、とりあえず出よう……!」
噛みまくる木戸さんの焦りっぷりと異様な迫力に押されて、慌てて歩き出す。
待っていても変なのでとにかくさっさと先に進んだけど、歩幅が違うから随分差がついてしまった。
廊下の壁にもたれて溜め息を吐いていると、木戸さんが遅れて廊下に到着。
扉を閉めて脱力する。
腕時計を確認すると、五時十分になろうとしていた。
……十分も過ぎちゃったか……ごめんなさい……。
……結構頑張ったんだけどな。
図書室で走るのは御法度なので、最大限に足を前に出して高速の早歩きをしたんだけど、さすがに一番奥の机からでは少し距離があったらしい。
軽く深呼吸をして隣を見ると、木戸さんがぜえはあ肩で息をしていた。