風薫る
「図書委員会はマシだって定評あるでしょ」


マシ。つまりは、楽。


面倒臭い委員会活動をやりたがる人はなかなかいないけれど、やらなくてはならない人も必ず出てしまうわけで。


確かに、仕事が少ない、と地味に人気だった気がする。


そっか、仕事が少ないのは、滅多に人が来ないうえに来たとしても数人だからだったんだ……。


私が頷いたのを確認して、瑞穂が続ける。


「つまり彩香くらいしか借りないし」

「うん」

「あたしは今日用事があるから一緒に行けないし」

「うん、……え?」


てっきり瑞穂も一緒に行ってくれるのだとばかり。というか瑞穂が一緒じゃないと困る、ほんとに困る。


ごめん、と両手を合わせてこちらを拝む友人を涙目で見つめた。


この学校の図書室は本棚の背が高い。


対して私は壊滅的に背が低いので、本棚の最上段は手が届かない。悲しいことにその一つ下の段も届かない。


だからいつもは、上二段に読みたい本がある場合、覚えておいて瑞穂にまとめて取って貰うのだ。


自分は借りないのに一緒に行ってくれる瑞穂は優しい。


でも、もし上の段に読みたい本があったらどうしよう。椅子にのっても届かないんだけれど……。


借りられなくて置いておいたら誰かが借りてしまった、なんて事態に陥るのは避けたかった。
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