風薫る
「えっと」

「快適なところを探すのが上手だから?」


黒瀬君が出してくれた、無難な選択肢に頷きつつ加える。


「それもあるよ。あとは幸せが近いから」

「どういうこと?」


抽象的すぎて伝わらなかったらしい。


聞き返されて、どう説明したらいいのかなあ、と頭を整理した。


……よし。


何とか説明できそうな見通しがついたので、しっかり黒瀬君の目を見る。


目は口ほどに物を言う。


目を見れば考えが分かる。


話すとき視線を合わせるのは私にとって、ごくごく普通のことだった。


「猫って目線が人より低いでしょ」


確認するように一度切ると、黒瀬君がうん、と頷いて続きを促した。


「四つ葉のクローバーって幸せの象徴だって言うよね」

「うん」

「猫って四つ葉見つけるの上手そうだなあと、思って……」


尻すぼみになったのは、目の前に座る黒瀬君が噴いたからだ。


抑えようとした肩が震えている。


「だって私、四つ葉のクローバー見つけるの下手なんだもん……!」
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