風薫る
そっか、黒瀬君と二人きりになる……!
今気づいた。全然考えてなかった。
そうか、そうなんだ、二人きりかあ。
嬉しいなあ、と思わずもれていた。
黒瀬君と二人かあ、楽しいよ絶対。だってすでに楽しい。
本の好みが似てるから話は合うし、弾むし、話題は尽きないし。
わあ、いいなあ。いいなあ。
喜色満面、途端に笑顔になった私を認めて、黒瀬君が戸惑った。
「どうしたの?」
聞いても返事が返ってこない。
「黒瀬君?」
「……ねえ、木戸さん」
す、と音もなく目線が上がる。
覗き込んだ私の目を黒瀬君の真剣な目が射止めて、逃がさない。
「黒瀬く」
「それ、額面通りに受け取るけど、いいの」
静かに念押しがされる。
「俺といて嫌じゃないって、楽しいって思ってくれてるって理解するけど、俺」
「うん。すごく楽しいよ」
即答した。
「今日だって急いで来てね、早く黒瀬君に会いたかったよ」
「……そっか」
「うん。そうだよ」
黒瀬君が肩の力を抜いた。
そろそろ図書室が閉まる時間だ。
慌てて帰り支度を始めた私に持ってきてくれた本を渡して、黒瀬君も支度をし始めた。
昨日の教訓を生かして、今日は荷物少なめ。余裕で入る。
帰ったら何よりも先に読もう。
にこにこする私を黒瀬君がと呼んだ。
「木戸さん」
「うん?」
振り返って向き合うと、あのさ、と彼は言葉を切って。
「俺も、……早く木戸さんに会いたかった」
ほんの少し照れを滲ませて微笑んだ。
今気づいた。全然考えてなかった。
そうか、そうなんだ、二人きりかあ。
嬉しいなあ、と思わずもれていた。
黒瀬君と二人かあ、楽しいよ絶対。だってすでに楽しい。
本の好みが似てるから話は合うし、弾むし、話題は尽きないし。
わあ、いいなあ。いいなあ。
喜色満面、途端に笑顔になった私を認めて、黒瀬君が戸惑った。
「どうしたの?」
聞いても返事が返ってこない。
「黒瀬君?」
「……ねえ、木戸さん」
す、と音もなく目線が上がる。
覗き込んだ私の目を黒瀬君の真剣な目が射止めて、逃がさない。
「黒瀬く」
「それ、額面通りに受け取るけど、いいの」
静かに念押しがされる。
「俺といて嫌じゃないって、楽しいって思ってくれてるって理解するけど、俺」
「うん。すごく楽しいよ」
即答した。
「今日だって急いで来てね、早く黒瀬君に会いたかったよ」
「……そっか」
「うん。そうだよ」
黒瀬君が肩の力を抜いた。
そろそろ図書室が閉まる時間だ。
慌てて帰り支度を始めた私に持ってきてくれた本を渡して、黒瀬君も支度をし始めた。
昨日の教訓を生かして、今日は荷物少なめ。余裕で入る。
帰ったら何よりも先に読もう。
にこにこする私を黒瀬君がと呼んだ。
「木戸さん」
「うん?」
振り返って向き合うと、あのさ、と彼は言葉を切って。
「俺も、……早く木戸さんに会いたかった」
ほんの少し照れを滲ませて微笑んだ。