風薫る
「この間、最高で週に三十冊超えたよ」


ちょうどシリーズものを読んでいて、あまりの面白さに削れる時間を全て削っていた。


睡眠時間まで削ったから、授業中も眠くなって仕方がなかったんだよね。


でも、それは構わなくて、とにかく楽しいその本を読むことに夢中になっていた。


「え、ちゃんと勉強したのその週」

「してないよ」

「いや、あのね、それじゃ本末転倒じゃん」

「……だって面白かったから、つい……」


瑞穂が真剣に呆れてしまっているので、もう強引に話をまとめることにしよう、うん。


「というわけで、今日借りに行かないと多分その人が借りちゃうから。今日中に行ってくるね」


一度に五冊まで。返却期限は二週間。


そんな規則に則って、新刊のうちの面白い本を全て借りられてはたまらない。


二週間なんて長すぎるし、期限の延長もできるし、もし逃したらいつ読めるか分からなくなってしまう。


新刊のリストの中には、個人的に苦手なジャンルのものが多かった。


面白いもの、好きなものを読みたいなら、やっぱり今日行かないと駄目だと思う。


「行けなくてごめん。でも、読みたい本がもし上段にあったらどうするの?」

「……頑張ってどうにかする」


うんうん考えてみたけれど、結局、そう答えるしかない。


「貴君の健闘を祈る。まあ、楽しんできて」


せめてもの意地で涙目で見上げた私とは対照的に、瑞穂は実に爽やかに笑った。
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