風薫る
うう、なんだかすごく目立ってる……! 何で、どうして!?


黒瀬君がかっこいいからかなあ。


みんな部活中の人たちばかりでしょ、部活しようよー!


たくさんの視線が私を射抜く。脆い私の心は萎縮した。


普通に黒瀬君と話しながら階段を降りてきたのだけれど、階段付近で部活中の人たちに例外なく振り返られるのだ。


だって行くところが同じなんだから、一緒に行くでしょう、当然。

そこで別々に行ったらおかしい。


とは思うものの、声をのせる勇気はないヘタレな私。


こ、怖いよ。


なんだかひそひそ話してるし、振り返る首の速度が速いし。


困って息を潜めて肩を小さくしていると、黒瀬君が私を呼んだ。


「木戸さん」

「うん」


そっと見上げる。


図書室からずっと、声は潜めて、の鉄則を実行中。静かに返した。


隣に並ぶと、黒瀬君の背が高いのと私の背が低いのとで身長差がかなりある。

……多分、三十センチくらい。


黒瀬君は足が長いから、隣の非常に私の足の短さが目立って不恰好だ。


これは階段差を利用するべきかなあ、なんて真剣に悩んでしまった。


不毛な思考に終止符を打ったのは、黒瀬君の不思議なお願い。


「ね、木戸さん。笑って?」
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