風薫る
*
大きくなるざわめき。上がった悲鳴。物珍しそうな視線。
全部を横目で受けとめて、そっと思う。
……まあ俺、今まで女子とそんなに話さなかったし、大抵敬語だし、ふざけてでもそういうこと言わなかったし、目立つのは仕方ない。
分かった、と至って自然に了承した木戸さんの耳を意図的に話し声で塞いで、いろいろを聞こえないようにする。
話題は本のことにした。本なら木戸さんは周りの声を気にしなくなる。
分かったって言っていたけど、木戸さんは俺が言ったことの意味を理解しているんだろうか。
結構頑張ったんだけど、多分全然伝わってない気がする。
……不安だ。
少し沈みつつ、にこにこしている木戸さんと若干早足で通り抜ける。
下駄箱で別れて、傘立てで集合して、急ぎ足に校門を抜けた。
「……ええと、ごめん黒瀬君、西公園ってどっちだったかな」
校門を出ると道が二手に分かれる。
半歩分前を歩いていた木戸さんが、左右を迷って立ち止まった。
「右だよ」
「ありがとう」
まだ微笑みを絶やさない木戸さんが、今度こそ隣に並ぶ。
多分、さっきまでは、早く抜けたくて急いでいたんだろう。
大きくなるざわめき。上がった悲鳴。物珍しそうな視線。
全部を横目で受けとめて、そっと思う。
……まあ俺、今まで女子とそんなに話さなかったし、大抵敬語だし、ふざけてでもそういうこと言わなかったし、目立つのは仕方ない。
分かった、と至って自然に了承した木戸さんの耳を意図的に話し声で塞いで、いろいろを聞こえないようにする。
話題は本のことにした。本なら木戸さんは周りの声を気にしなくなる。
分かったって言っていたけど、木戸さんは俺が言ったことの意味を理解しているんだろうか。
結構頑張ったんだけど、多分全然伝わってない気がする。
……不安だ。
少し沈みつつ、にこにこしている木戸さんと若干早足で通り抜ける。
下駄箱で別れて、傘立てで集合して、急ぎ足に校門を抜けた。
「……ええと、ごめん黒瀬君、西公園ってどっちだったかな」
校門を出ると道が二手に分かれる。
半歩分前を歩いていた木戸さんが、左右を迷って立ち止まった。
「右だよ」
「ありがとう」
まだ微笑みを絶やさない木戸さんが、今度こそ隣に並ぶ。
多分、さっきまでは、早く抜けたくて急いでいたんだろう。