風薫る
それからの話題は俺から振った。


積極的に話しかけて、頷いてくれていればいいようにする。


いつもよりゆっくり、歩幅も小さく歩く。


木戸さんが半歩分前を歩いていたさっきまでの速度を思い出して、慎重になぞった。


並んで歩ける時間を一歩一歩踏みしめる。


普通に横を見ると木戸さんの頭が見えるから、少し首を傾げないと目が合わない。

そんな身長差を改めて認識する。


歩くのが速いなんて、木戸さんは遠慮してきっと自分からは言い出さない。


確実に疲れないように、いつもよりたいぶゆっくり歩いた。


木戸さんは多分大丈夫に見える。

息も上がっていないし、小走りになったり早歩きになったりもしていないし。


慎重に慎重にと心の中で唱えながら、とりあえず身近なことから聞いてみた。


「木戸さんって部活入ってる?」


あれから毎日、図書室に行くと先に木戸さんが待っていて、帰りは大抵一緒に帰るけど、どこかで部活に行っているのだろうか。


うちの学校は部活に入るのは強制じゃないから、放課後の様子を鑑みるに、入ってないんじゃないかなと思うんだけど。
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