風薫る
「入ってないよ」
やっぱりそうなんだ。
納得しつつ、でもどこかで木戸さんは文芸部に入っていそうな気がしていた。
文芸部は大抵半年に一冊部誌を発行している。
書くのじゃなくて読むのが好きな人だから、そうすると読む専門の部活はうちにはなくて、どこにも入らなかったのかもしれない。
……もしそうだとしたら、俺と同じだ。
黒瀬君は? と聞かれて、俺も入ってない、と返せば。
「そっかあ、入ってない者同士だね」
お揃いみたい、というのは聞かせるつもりはなかったんだろう。
聞かせるつもりならちゃんと音をのせるはずで。
でも、お揃いみたい、って楽しそうに笑う口元から、そう唇で読めた。
……不意打ちはずるい。
「黒瀬君?」
「き、っ」
何を言おうとしてた、俺。落ち着け落ち着け。
木戸さんと会うのにその後予定を入れてくるわけがないよ、と口を滑らせかけて慌てて息を吸った。
そうしたらむせて心配させてしまって。
馬鹿だとは思うけど、息を吐いたらそのまま言ってしまいそうだったので仕方ない。
自業自得だからと手を振れば、よく分からなかったのか首を傾げていた。
やっぱりそうなんだ。
納得しつつ、でもどこかで木戸さんは文芸部に入っていそうな気がしていた。
文芸部は大抵半年に一冊部誌を発行している。
書くのじゃなくて読むのが好きな人だから、そうすると読む専門の部活はうちにはなくて、どこにも入らなかったのかもしれない。
……もしそうだとしたら、俺と同じだ。
黒瀬君は? と聞かれて、俺も入ってない、と返せば。
「そっかあ、入ってない者同士だね」
お揃いみたい、というのは聞かせるつもりはなかったんだろう。
聞かせるつもりならちゃんと音をのせるはずで。
でも、お揃いみたい、って楽しそうに笑う口元から、そう唇で読めた。
……不意打ちはずるい。
「黒瀬君?」
「き、っ」
何を言おうとしてた、俺。落ち着け落ち着け。
木戸さんと会うのにその後予定を入れてくるわけがないよ、と口を滑らせかけて慌てて息を吸った。
そうしたらむせて心配させてしまって。
馬鹿だとは思うけど、息を吐いたらそのまま言ってしまいそうだったので仕方ない。
自業自得だからと手を振れば、よく分からなかったのか首を傾げていた。