風薫る
折った話の腰を戻したのは木戸さん。


部活かあ、と感慨深げに頷いている。


「何となく入らないままで一年が過ぎて、あの日が来て」


あの日というのが、あの、俺が木戸さんに声をかけた日のことだ、というのはすぐに分かった。


ほんの数日前の話だ。


「何だかもう、黒瀬君と会う放課後が普通になって、部活みたいになっちゃった」

「そっか。俺もそんな感じ」


おんなじだねえ、と二人で呟いて。


「じゃあいっそのこと、部活作る?」


提案に木戸さんが首を傾げた。


「文芸部ってこと?」

「うーん、文芸部はもう既にあるから、読書部、とか」


部活内容は読書。ひたすら読書。

俺たち本好きにとってはただの幸せな時間だ。


それいいね、面白そうだね、と楽しそうな木戸さんに頷く。


「案外二、三人は入りそうだよね」


文芸部は嫌だけど読書は好きっていう人がいるだろう。


思い付いた知り合いに、声をかけたら入ってくれそうな人が結構いた。多分喜んで参加してくれる。


じゃあほんとに作る? と言おうとしたら、でも、と木戸さんが先に口を開いた。
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