風薫る
最後輪にするのができなくて、どうやるの? と聞いたけど、何度確認してもよく分からなかった。


諦めて、やろうか、と出された手に渡してやってもらう。


「……難しいね、これ」


次は自分でやる。


慣れた様子で動く手をジト目で見つつ、ぽろりともらせば、木戸さんが朗らかに笑った。


「いやいや、上手だよ」


頭を抱えて呻く。


「それは最早塩だけじゃなくて胡椒も塗ってるから。思いっきりすり込んでるから……!」


心が痛いです。


ころころ軽やかに笑って、隙間が多いからくたってなっちゃうのかなあ、と分析して補強してくれた木戸さんにまだ拗ねている俺は、ちょっと子どもっぽいだろうか。


木戸さんの手の中の輪は綺麗になったけど、足元のシロツメクサを凝視する。


もう一回作ってみようか。

そうしたら少しは上手くなるだろうか。


うんうん唸る俺を木戸さんが呼んだ。


「黒瀬君」


「うん、何? ……って、木戸さん!?」


はい、できたよ、と木戸さんが俺の頭へ冠をのせた。


え、えっ?

何てことをするんだ……!


「できたよ、じゃなくてですね!」


うん? と首を傾げている木戸さんに溜め息。


何のホラーだ。

俺にはメルヘンすぎる。意外な刺客すぎるだろ。


困惑したまま、とにかく行動せねば、と俯きざまにそれを掴んだ。
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