風薫る
*
「え」
離れていった大きな手が髪をかすった。
よし、と満足げに頷いて。
「うん、可愛い。やっぱり木戸さんは似合うよ」
さらりと言った黒瀬君が私の頭にのせたのは、避けておいた私作の花冠。
「黒瀬君も似合うよ?」
「木戸さんは、でしょ」
細かく訂正して、俺は似合わないよ、としきりに頭を気にする黒瀬君に笑う。
似合うよ、
似合わないの、
似合うってば、
似合わないってば、
と、じゃれあいのような言い合いをしていると。
「俺のは……下手だし」
下手じゃなければいいのか、なんて言ってしまったらいけない。
気付いていない黒瀬君に黙って続ける。
「私のと交換する?」
意図的にからかうと早口の返答が返ってきた。
「そういう問題じゃなくてですね!」
黒瀬君は照れるとたまに敬語が混じる。
照れたとき、多分怒ったときも、きっと何かしら強い口調になるときに、きつく言い過ぎないようにだろう。
語尾を弱くするそういう言葉の選び方が、いいなあと思う。
「でもほら、私は小さい頃なんて毎日のように作ってたよ」
「それは……そうだけど」
何だか悔しいらしい。
「え」
離れていった大きな手が髪をかすった。
よし、と満足げに頷いて。
「うん、可愛い。やっぱり木戸さんは似合うよ」
さらりと言った黒瀬君が私の頭にのせたのは、避けておいた私作の花冠。
「黒瀬君も似合うよ?」
「木戸さんは、でしょ」
細かく訂正して、俺は似合わないよ、としきりに頭を気にする黒瀬君に笑う。
似合うよ、
似合わないの、
似合うってば、
似合わないってば、
と、じゃれあいのような言い合いをしていると。
「俺のは……下手だし」
下手じゃなければいいのか、なんて言ってしまったらいけない。
気付いていない黒瀬君に黙って続ける。
「私のと交換する?」
意図的にからかうと早口の返答が返ってきた。
「そういう問題じゃなくてですね!」
黒瀬君は照れるとたまに敬語が混じる。
照れたとき、多分怒ったときも、きっと何かしら強い口調になるときに、きつく言い過ぎないようにだろう。
語尾を弱くするそういう言葉の選び方が、いいなあと思う。
「でもほら、私は小さい頃なんて毎日のように作ってたよ」
「それは……そうだけど」
何だか悔しいらしい。