風薫る
「もう一つ作ってもいい?」

「うん」

「ごめん待ってて」


作り始めた手つきはとても速かった。


許可を取ってお互いの頭から外した二つともを持参した袋にしまって、横目に見てみると、もう半分は編み終わっている。


おお、飲み込み速いなあ。


元々器用なんだろうな。


男子高校生が真剣に作っている図は結構傍目には奇妙に映るの気がするのだけれど。


私もしゃがめば目立たないかなあ。


一緒に座り込む。


じいっと見られても作りにくいかなあと思って、きょろきょろ辺りを見渡した。


霞草が咲いている。白くて小さい花が可愛い。

野いちごもある。

いちごといえば、私にとってはあの本だ。


黒瀬君が取ってくれたのは苺色の本だった。


そういえば、確か花冠にも何か意味があったような。


「木戸さん」


ふいに呼ばれてのせられた冠は大きくて、少しずり落ちる。


ぼうっとしているうちに、いつの間にか編み終わっていたのだった。


慌てて支えると、大きかったか、と黒瀬君が笑った。


その優しい微笑みに、突然。


……思い、出した。そうだ。
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