イジメ.COM
☆☆☆

由梨がいる場所は蓮のイトコの家だった。


イトコの家までは電車で20分くらいの場所だ。


放課後の開いた時間でも十分に行ける距離。


それでも蓮があたしを連れて行きたがらなかったのは、それなりに理由があるからだ。


蓮と2人で電車に揺られることなんて初めての経験なのに、あたしの心はずっと沈んでいた。


景色を見るような気分でもなく、ただ沈黙の時間だけが過ぎて行く。


目的の駅に到着すると、蓮が安堵したように大きくため息を吐き出した。


蓮にとっても、苦しい時間だったようだ。


駅から歩いて10分ほどの場所にある一戸建ての家の前で蓮は立ち止まった。


石に掘られている表札には入江と書かれている。


この家の中に由梨がいると思うと、気持ちが焦った。


あたしは蓮より前に立ち、玄関のチャイムを鳴らした。


中からはなんの反応もない。


あたしはもう一度チャイムを鳴らす。


やっぱり反応はなかった。


家の人は留守みたいだ。
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