Sweet Love
 それから料理ができあがるまで小一時間掛かった。テーブルの上にはずらりと料理が並べられ、普段より品数が多かった。テーブルの表面はほぼお皿に埋め尽くされて見えない。



「…それにしても、……すごい量……だね」

「俺ら食う量が半端ないからな」

「……」



 そうそう、うちの兄ちゃんの食いっぷりはとても半端ない。


 優希さんもかなり食べる方だから、二人が揃うといつもすごい量になる。もし優希さんがうちの家族だったら、一月どれぐらい食費代かかるんだろう。



「さぁさぁ食べましょ。あ、麗美。ケーキ買っておいてあるから食べ終わったらあとから食べましょ」

「お母さん、わたしそんなに食べられないよ…。ていうか太る」

「少しくらい良いじゃない。麗美は少し痩せすぎなんだから沢山食べないと」

「たとえ太ったとしても麗美ちゃんは可愛いよ」



 優希さんは、にこりと笑顔を浮かべながら言った。



「でも太ったら椅子壊れるかも知んないな」



 兄ちゃん、なんってことを…。


 優希さんの前で、許せない。


 わたしはイラッときたので、兄ちゃんの足を下から思いっきり蹴った。



「いっ……て!」



 ――ふんっ、兄ちゃんが悪いんだからね。



 わたしは何事もなかったかのように、ただひたすら食べ続けた。



***



 その日の夜、みんなが寝静まった頃。わたしはまた不思議な夢を見ていた。



 この夢は見たことある――。わたしは、そうだ、と思い出す。それは、今朝見た夢と全く同じ内容のものだった。


 誰かと手を繋ぎながら、空を見上げる夢。屋上。雲ひとつない快晴の青空。眩しくて暖かくて、隣には誰かが居て。


 でも顔を確認しようとするといつもその顔はぼやける。どうして隠すのかわからない。夢なのだから見せてくれたって良いのではないかと思う。どうせ目を覚ましたら、忘れてしまうことの方が多いのだから。


 それでも空を見上げるだけで、その時間がとても心地良いと思う。


 意識が遠退いてはっきりしないまま、わたしは深い深い暗闇の眠りに落ちていった。
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