Sweet Love
 萩原くんは既にお弁当を食べ終えたようで、もうお弁当包みにすっかりくるまれていた。


 流れる沈黙の空気に耐えきれなくて、わたしは思い付く限りの言葉を口にした。



「あ、あの…もう牧原くんと裕子って付き合ってるのかな?」

「いや、付き合ってはいないだろ」

「…そ、そうだよね…」



 …あ、終わった。

 簡単に会話が終わった…。



 またもや沈黙に包まれる屋上。


 わたしは、彼の顔にこっそり視線を向ける。萩原くんはただ黙って空を見上げていた。


 わたしも同じように空を見上げると、今朝見た夢を鮮明に思い出して、胸が締め付けられた。



「――萩原くん。わたしね、今日夢見たんだ。…萩原くんとわたしが一緒に空を見てる夢…」



 次の瞬間、萩原くんは素早くこちらに振り向いた。彼の敏感な反応の仕方に驚いたわたしは、思わず隣に視線を向けた。彼は双眸を見開いて、じっとこちらを凝視している。



「…萩原くん?」

「……俺も今日、見た。…その夢」

「ウソ…」



 わたしは信じられなくて思わず口を手の平で覆った。



「…本当。時々見るんだよ。誰かと空を見てる夢…。でも今朝、…その相手がはっきり見えたんだ。最初は全然誰なのかわからなかったけど、…石田だった」

「え、それじゃあわたし達、同じ夢を見ていたってこと…?」

「…そう…みたいだね」



 わたし達は、無言で視線を交錯させる。


 
 ――信じられないんだけど、これって現実?

 また、夢?



 受け入れ難い話に頭がついていけない。気付いたら鼻がツンと痛くなって、わたしの目には涙が溜まってた。
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