Sweet Love
 萩原くんは、掠れた声で囁いた。



「…何で、泣いてるの?」

「だ、だって、何か…」



 わたしは慌てて目元を拭う。彼と目線を合わせられなくて、下に俯いた。



「…前も泣いてたよな。今、……理由言える?」



 こちらに向かう彼の手が視界に入ってきて、わたしは目線だけ動かした。


 萩原くんは、顔にかかった髪を避けるみたいにそっとわたしの髪に触れた。


 その仕草は、身体中を熱くさせる。


 わたしは、顔を上げて大きく息を吸い込んだ。



「わ、…わたし、萩原くんのこと、……好きだよ。前から好きだったよ…っ。だから…」



 わたしの涙が更に溢れ出たとき、萩原くんの指が零れ落ちる直前の涙をすくい上げた。



「……石田」



 萩原くんの両腕が、わたしの身体をギュッと優しく抱き寄せた。


 萩原くんの温もり。


 萩原くんの匂い。


 萩原くんの速い心臓の音。


 波打つ胸の鼓動が、互いに共鳴し合ってるみたいだ。


 わたしは、萩原くんのブレザーをギュッと握り締めた。



「……ねえ、石田。一回しか言わないから」



 耳元でそんな囁き声が聞こえた。


 萩原くんは、わたしの身体を離すと両肩に手を置いたまま、じっと真剣な目付きでわたしを見つめた。


 太陽に当たって茶色くなった吸い込まれそうな瞳を見つめながら、わたしは頷いた。



「俺も好きだよ」

「……え、ウソ」



 信じられない言葉に耳を疑い、両手で口を覆った。



「…で、でも、萩原くん好きな人いるって、朱菜ちゃ…ん…」
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