Sweet Love
 言葉の続きを言う前に、次の瞬間。


 わたしは大きく目を見開いた。


 気付いたら萩原くんに唇を塞がれていた。


 萩原くんはゆっくりと唇を離し、じっとわたしを見つめる。


 心臓がとくん、と跳ねる。


 キスされたことに漸く気付いて、顔に熱が帯びるのを感じた。まともに見てられなくて、わたしは視線を彼の胸元に落とす。



「ふぁ…」

「…ふぁ?」

「…ファーストキス…今の…」

「…ファーストキス、俺が奪っちゃった?」



 わたしは、こくりと頷いた。


 そのとき、不意に屋上のドアの開く音がした。


 素早く視線を巡らせると、兄ちゃんと優希さんの姿が目に入る。


 わたしは一気に凍りつき、固まった。



 …た、タイミングわるっ…。



 兄ちゃんと優希さんは、足早にこちらへ向かってきた。


 兄ちゃんは、わたしの顔を見て、次に萩原くんへ視線を移す。



「何やってんだ?」



 兄ちゃんは、萩原くんを睨んだ。



「いや、あの…」

「うちの妹を泣かせて、何やってんだ?」



 ――最悪だ。



「どうしたの?」



 優希さんだけ、この場にふさわしくない笑みを浮かべている。
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