Sweet Love
 玄関も無駄に広い。入って左側には、かなり高さのある靴箱があった。その反対側には胸くらいまでの高さの靴箱があり、その台の上にはレースが敷いてあって、花瓶が置いてある。花瓶には上品なピンクのバラが飾られていた。



「牧原、あんた金持ち?」



 牧原はスリッパを人数分用意したあと言った。



「まあ、母さんがね。俺は別に金持ちじゃないよ」

「…へえ」



 距離がある長い廊下を進む。あたし達は階段を上がり、そのまま牧原の部屋へ移動した。



「…ここ、本当にあんたの部屋?」

「うん」

「…牧原くん、失礼なこと訊いていい?」

「何?」

「牧原くんの部屋って、何畳なの?」

「一二畳」



 え、一二畳ってあんった。

 リビング並みの広さじゃん…。



 麗美は目を丸くさせ、改めて部屋を見回す。



「わたしの部屋の二倍だ…」

「あたしも…」



 牧原は苦笑を浮かべて、テレビにゲームをセッティングし始めた。



「広すぎても困るんだけどね」



 その発言ちょっと憎たらしい。それでも、羨望の眼差しで部屋を眺め回した。
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