Sweet Love
「いや、弁償なんてしなくてもいいから」

「わかった…。でもなんか怒ってない?」

「いや、怒ってないよ。怪我したら大変だから軽く怒っただけ。素手で触ると危なっかしいと思って、…つい。…ごめん」



 なんだ、…やっぱ怒ってたんだ。



「いや、あたしこそ、グラス割っちゃったし…」



 てっきり高価なもので、それをあたしに割られて牧原はカチンときたのかと思ったよ。

 あたしの不注意さが、原因なわけか…。



「グラスに注いで」

「あ、うん」



 牧原が新たにグラスをキッチンの台に置く。



「よろしく。これ、割ったやつ包むから。あとお菓子も用意したいし」

「うん」

「そう言えば、麗美ちゃん良かったね。萩原と想いが通じて」

「うん。本当に良かった。まあ、花咲さんのことがあってヒヤヒヤしてたけどね、あたしも」

「あれは酷かったよな。とりあえず解決したみたいだし本当に良かったよ。松田はどうなの?」



 牧原は、拾い集めたグラスの破片を新聞紙で包みながら言った。



「どうって何が?」

「いつも最近騒いでるじゃん。麗美ちゃんの兄貴に。あの、三年の先輩」
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