Sweet Love
 口の中でもぐもぐさせると、あたしはそれを早く飲み込み、消化器官へ送らせた。


 あたしが飲み込んだのを確認したのか、誠二先輩が「で、用件は何だ?」と、再びさっきと同じ質問を今度はあたしに向かって放つ。


 思い切って、言ってみよう。



「…あの、わたしとお友達になってくれませんか?」



 我ながら、ものすごく恥ずかしいことを口に出していた。


 
「いいよ」



 絶対笑われると覚悟してたのに、誠二先輩は悩む素振りも見せず、非常に真面目な顔で了承してくれた。同じ学生とは思えない大人な対応に、思わず感銘を受ける。あたしの中で誠二先輩への好感度が更に上がった。もっとこの人をよく知りたいと思った。



「兄ちゃん、アド交換してあげれば?」



 …ナイス、麗美。


 よっしゃあ、と心の中であたしは叫ぶ。



「あー、いいよ。……ちょっと待って」



 誠二先輩はポケットから黒い携帯を取り出した。携帯を操作し、その画面をあたしに見せる。



「はい、これ」

「ありがとうございます!」



 あたしは誠二先輩の手から携帯を受け取り、先輩の連絡先を登録する。



「すいません、ありがとうございました。今日帰ったら、夜にメールしてもいいですか?」

「構わない」



 …構わない、かあ。


 素っ気ない返事だけど、何てメールしようかと頭では既に考えていて、もう胸が踊っている状態だ。



「じゃあ、俺たち教室戻るから」



 優希先輩はまたね、と言って、誠二先輩と一緒に背中を向けて歩き出す。あたし達は、校舎に入って行く二人を見送った。



「あ」

「どうしたの?」



 あたしは麗美の視線の先を追う。そこは三階の廊下に面している窓だった。



 ――牧原。



 牧原は窓縁に頬杖をつきながら、こちらを見下ろしていた。
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