Sweet Love
 あたしと目がぴったり合うと、牧原はふいっと体の向きを変え、そのまま奥へと消えてしまった。



 …牧原、もしかしてさっきから覗いてた?



 あたしでは誠二先輩に相手にされないって思っているのはわかっている。それは前にも言われたことがあった。


 だから…見てたの?


 結果を探り入れるために?


 あたしだって、女子だもん。甘えることくらい、ちゃんとできる。


 いつか、絶対見返してやるんだから。あたしだって、ちゃんと女の子なんだよ、ってことをわからせてやる。


 そう心に誓いを立ててから、不意に牧原の顔が頭を過る。さっき目が合ったときのあの顔だ。あのとき牧原は、嫉妬と怒りが混ざり合ったような、そんな目であたしを見下ろしていた。でも、遠くからだったし、もしかしたらあたしの見間違いかも知れない。



 ――きっと見間違いだ。


 
 あんな牧原が、そんな顔するわけない。


 きっと興味本位で覗いて面白がってたんだ。



「牧原くん、どうしたんだろうね?」

「知らない、あんなヤツ」

「何で怒ってるの? …喧嘩でもしたの?」

「喧嘩なんてしてないよ。たださ、どうせあたしのこと面白がって今まで黙って見てたんだよ、さっきから。誠二先輩とのやり取りをさっ」



 自分でもよくわからない怒りがふつふつと沸き上がり、どうも早口になってしまう。



「どうして、牧原くんが面白がるの?」
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