Sweet Love
「この間、牧原の家に遊びに行ったでしょ? あの日に、言われたの。相手にされないんでないのって。ちょっとそれで、牧原と軽く言い合いしちゃってさ。…だからきっと、面白がって窓から見てたんだよ。多分」

「…牧原くんは、そんな人じゃないと思う」



 麗美は真剣な瞳でそう訴えた。



「何でそう思うの?」

「だって…」



 麗美はそのまま、きゅっと唇を結ぶ。



「な、何よっ」



 なかなか喋ろうとしない麗美に痺れを切らしたあたしは、もう一度問うた。



「…牧原くんは、裕子のこと心配してるんじゃないかな?」



 心配?

 あの牧原が、あたしを…?



「そんなの、有り得ないよ」

「でも、牧原くんはちゃんと裕子のこと考えてるはずだよ。だって、見てたらわかるもん。…それに、牧原くんは裕子の一番良き理解者でしょ? 気に掛けても全然不思議じゃないよ」

「…牧原が良き理解者?」

「うん。わたしは、そう思うな。裕子は、いつも牧原くんに冷たい態度取ってるけど、牧原くんは全然嫌がっていないみたいだし。…きっと、裕子はそういう人なんだって、牧原くんは理解してるんだよ。だから…」



  麗美はそこで一旦言葉を切る。眉間に皺を寄せながら、難しい顔で考え込んだあと、やがて先ほどの発言を埋めるように慌てた口調で語り出した。



「だから、今回の兄ちゃんの件で裕子に傷ついて欲しくないんじゃないかな? きっと」



 言ったあとに急に自信を失くしたのか、麗美はしゅんと肩を竦めた。
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