Sweet Love
 麗美が言うように、もし牧原があたしが傷つくかも知れないと心配しているのなら…。


 あたしは、そんな心配なら、…いらない。


 傷つくのを前提に考えるのが間違っている。それだったら、この先、あたしの恋愛の未来はない。実際にやってみなきゃ、結果なんてわからない。


 だけど、麗美をここまで考えさせてしまった自分に腹立たしさを感じていた。


 実際に麗美は今、かなり落ち込んでいる。おそらくその様子だと、自分の発言に後悔しているに違いない。



「麗美、ごめんね。…ありがとうね」



 麗美は顔を上げる。



「わたしも、ごめんね。ちょっと余計なこと、…言い過ぎた」

「…うん、本当にさっきのは余計」



 あたしは麗美へニカッと笑みを投げた。



「ちょっと、裕子ぉ! 裕子の超ド級ドS!」



 そう言いながら、あたしの肩を軽く叩いてきた。麗美の声が校庭に響き渡り、おかげで他の生徒が一斉にこちらに注目した。



「れ、麗美、あんた声でかいっ」

「あ、ごめん…」



 麗美はエヘヘと頭部を押さえながら、笑っている。



「麗美。でもあたしは、誠二先輩のこと諦めないよ。だって、まだ何も始まってないんだもん」

「…そうだね。まだわかんないもんね。わたし、裕子のこと応援するよ。兄ちゃんに何か嫌なこと言われたら言って? わたしが、兄ちゃんに一発蹴りいれてあげるからっ!!」



 麗美は拳を握りしめ、自信満々にガッツポーズを決めた。



「あ、ありがとう」



 麗美に圧倒されたあたしは、麗美が誠二先輩に蹴りをいれてるところを頭の中で思い浮かべようとする。



  …麗美が蹴り…。

 ダメだ。全然上手く想像できない。



  想像した脳の映像は、すぐに打ち砕かれてしまった。
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