Sweet Love
 しばらく経つと、昼休みの終わりを告げる鐘の音が鳴り響き、あたしと麗美は急いで教室へと戻って行った。


 教室のドアを開けると、クラスのみんなが既に揃っていた。座っていない生徒もちらほらいる。


 後ろのドアから入ってすぐ側には、牧原の席。


 牧原はもう席に着いている。牧原は、次の授業の準備に取り掛かっていた。


 教室に入る寸前、牧原と一瞬目が合ったけれど、あたしはすぐに目を逸らす。


 麗美が最初に入り、あたしもその後を追うように自分の席へ向かう。


 そのまま牧原の席を通過しようとしたとき、牧原が突然あたしの腕を掴んだ。



「おい」



 腕を力強く鷲掴みにされて、あたしは思わず振り返る。



「な、何よ」

「漫画、持ってきた?」



 …なんだ、漫画か。



 誠二先輩のことで何か言われるのかと思っていたけど、どうやら違ったみたいだ。


 そう言えば、ちゃんと持ってきていたのに、漫画を返すのをすっかり忘れてた。



「持ってきてるよ。とりあえず今日は五冊持ってきた」

「そ。じゃあ、あとでそれそのまま萩原に貸してやって」



 それより、腕をなんとかしてよ。



「ん、わかった。…それより手」

「ああ、…ごめん」



 牧原は掴んでいた腕をパッと放し、漸く解放してくれた。



「もう授業始まるから戻る。萩原にはあとでちゃんと渡しておくから」

「ああ。よろしく頼む」



 あたしはそのまま自分の席へと戻って行った。
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