Sweet Love
「…日曜日か」

「牧原、あたしって普通に会話してるとき、キツイ?」

「うん、普通にキツイ。めんこいとは思わない」



 牧原は、ニヤリとさせながら即答で答えた。



「…牧原、一発殴っていい?」



 あたしは拳を握って牧原に構えて見せた。あたしの中の何かが怒りの炎で燃え上がる。


 牧原は一瞬怖気付き、待った待ったと両手の平をあたしに向けてきた。



「ぼ、暴力反対。そういうことするから松田はダメなんだって」



 うっ…。

 あたし、またやってしまった…。



「だってあんたが、めんこくないとか普通にさらっと言うからイラッときたんだもん」

「…松田はあれだな。まずイライラすると、顔にも出るし口にも出るんだよ。それで、自分をコントロールできなくなって、おまけにキレやすい。少なくとも先輩の前では、そこは変えていった方がいいかも」

「簡単に変われないよ。…そんなの。しかも先輩の前ではキレないし。絶対」



 簡単に変われたら、そんなの誰だって苦労しないよ。


 牧原と出逢ってから約二ヶ月半しか経っていないのに、ここまで言われちゃうと、よくあたしのことわかってるなって思う。


 中学のときに、男の子と一度だけ付き合ったことがある。


 その別れた原因はあたしにあった。


 彼の近付いてくる唇に怖くなって、顔面を思いきりビンタしてしまったこともある。それだけじゃない。一番の主な原因は、あたしの接し方に問題があった。



『思っていたのと違う』


『こんなはずじゃなかった』



 当時言われたときは、かなり落ち込んだ。


 それほど、牧原に言われたことはピッタリ当たっていて、図星だった。



「松田の悪い癖だよ」

「じゃあ、どうすればいい?」



 あたしは牧原の向かいにしゃがみ、膝の上で頬杖をついた。



「簡単だよ。臨機応変にってのもあるけどさ、無闇やたらに素直に思ったことを口に出さない。…あとは、イライラしたら感情を抑えて我慢すること、かな」
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