Sweet Love
「…そう言えば、麗美がさっき言ってた。先輩はベラベラ喋るうるさい女の子は苦手だって」

「じゃあ、少し無口っぽく…会話も控えめにして喋ればいいんじゃない」

「無口っぽく、かあ…。なんか難しい…」



 あたしは本棚をぼーっと見つめながら、思案した。



「……口数を減らして、先輩の気を引くとか」

「…何かよくわかんないけど、頑張って、みる…よ」



 そのとき、牧原が急に慌てるようにして立ち上がった。あたしは不思議に思い、牧原を見上げる。牧原は、何故かじっとこちらの顔を真顔で見ていた。



「…どしたの」



 あたしから視線を外したかと思えば、牧原は窓の遠くを見つめてこう言った。



「見えてる」

「何が?」



 牧原がこちらに視線を戻すと、あたしの足元の辺りを指差す。



「パンツ」



 牧原は、涼しい顔をしてそう言った。



「……牧原!!」



 あたしはすぐに立ち上がり、牧原の頭部へ拳骨を食らわそうとしたそのとき。


 牧原に見事、握り拳をキャッチされてしまった。動きがフリーズしてしまい、そのままあたしの体はバランスを崩しそうになる。


 牧原はそれを察し、もう一方の手で、あたしの腰の辺りを手で押さえながら支えた。


 拳を動かそうとしても、牧原の手がそれを邪魔して抵抗すらできない。
< 140 / 199 >

この作品をシェア

pagetop