Sweet Love
***



 その日の昼休みが終わったあと、授業中に酷い頭痛と眩暈を感じたあたしは、授業を抜け出して保健室へと向かっていた。


 麗美に「一人で保健室行ける? 大丈夫?」と心配されたけれど、あたしは笑顔で「大丈夫だよ」と言って一人で教室を出た。


 もしかして、昨日ずっと窓開けっ放しにしていたからそれで――。


 午前中は全然何ともなかったのに。


 若干よろめきながらも、無事に保健室に辿り着いたあたしは、ドアをノックした。



「はーい」



 保健室のあゆみ先生のきれいな高い声が返ってくる。あたしはドアを開け、保健室の中へ足を踏み入れた。



「…あの、先生。ちょっと具合悪くて。少し横になりたいんで、ベッド借りてもいいですか」

「あら、どうぞどうぞ。使って」



 あゆみ先生は、にこりと微笑みながら席を立つ。


 ベッドの方を見ると、ふたつあるうちの入口側のベッドに薄いイエローのカーテンが引いてあった。



「あ、隣は他の生徒さんが使っているから、こっちね」

「あ、ハイ。すいません」



 あたしは上履きを脱いで床に並べ、そのまま窓側のベッドに上がり、仰向けの状態になる。



「あなた一年生よね? お名前は?」



 あたしを上から覗き込むあゆみ先生の長い髪が、さらっと肩から落ちた。



「…松田です」



 あゆみ先生は、その落ちた長い髪を片耳にかける。



「松田さんって言うのね。…うん、覚えとくわね。どこか、痛いところはある?」

「…頭痛いのと、あと少し眩暈があるのと身体がちょっとだるいです…」
< 142 / 199 >

この作品をシェア

pagetop