Sweet Love
「風邪…か。あ、そうだ」



 何を思い付いたのか、誠二先輩は制服のポケットに手を忍ばせ、何か取り出した。



 …何だろう。



 あたしのベッドの方へゆっくりと歩み寄る誠二先輩に、ドキッとするあたし。



「これ、あんまり意味ないと思うんだけど、よかったらどうぞ」



 誠二先輩から貰ったのは、生姜飴だった。


 生姜飴とかなかなか渋いなって思いつつも、あたしは素直にお礼を言った。



「ありがとうございます」



 誠二先輩は口許を緩め、柔らかな笑顔をあたしに向けながら、静かに口を開いた。



「海鮮丼、楽しみだね。日曜までに早く風邪治るといいね」



 そう言って誠二先輩は、「じゃあ、お大事に」と言い残してくるりと背を向けたあと、そのまま保健室を後にした。



 …絶対、治してみせます。



 基本誰に対しても素っ気ない感じなのに、意外と優しい部分もあるんだなあ、とあたしは今初めて発見した。


 見た目はいつも無愛想で冷たい感じだけど。


 はたして、あたしの恋は上手くいくのだろうか。


 そんなことを考えながら、先ほど貰った生姜飴を見つめていた。


 一人になると、思い出したかのようにまたあの激しい頭痛がやってくる。あたしはそのまま、また深い眠りに落ちていった。
< 145 / 199 >

この作品をシェア

pagetop