Sweet Love
 牧原は鼻の頭をポリポリ掻きながら、こう言った。



「要は、そのブランドのデザイナーとか、コンセプトの戦略とか考えたり、ショップの展開とか、簡単に言うとディレクターには全責任がかかっているんだよ。柱みたいな感じ」

「…よくわからないんだけど、…ってことは、偉い人?」

「うん。多分。俺、男だからよくわからないけどね。仕事内容までは」



 麗美は、興味津々なのか牧原の話に真剣に聞き入っているようだった。感銘を受けてるみたいに目をぱっちり開けながら、麗美は「凄い…」と呟く。


 そこで牧原が「俺の家の服、借りればいいじゃん」と言ってきたのだ。


 買うからいいよ、と一度断ったのだが、牧原はしつこく「お金がもったいないだろ」と言って、仕方なく今回、洋服を借りる羽目になってしまい、今に至る。


 牧原から先ほど聞いたのが、両親は片親で母親に育てられてきたこと。それから、三姉妹の名前をちらっと牧原に事前に教えてもらっていた。


 長女が愛香さんでレディースブランドのディレクターさん。そして次女の幸香さんと、三女の優香さんは愛香さんのアシスタントをしているらしい。


 今こうして牧原の家の居間にいるあたし達は、弾力あるふかふかのソファーコーナーに座っている。


 その向かいのソファーには、次女でも、三女でもなく、ただ一人、長女の愛香さんが、にっこりと微笑みながら目の前に足を組んで座っていた。


 とてもキレイな人で、子供のあたしから見ても見惚れてしまうくらい。彼女は、それほど魅力的な容姿を持ち合わせていた。


 まつ毛はパッチリしてるんだけど、決して化粧は濃くないし、ナチュラルなメイクだ。タイトな花柄スカートから覗く、煌びやかな細いキレイな足にも、同じ女なのに、つい目がいってしまう。
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