Sweet Love
「というわけで、コイツに服貸してやって」



 牧原が要点を簡潔に説明したあと、愛香さんは満面の笑顔で「オッケー」と応えた。



「じゃあ、裕子ちゃん。案内するわね」



 目を細めながら、彼女は立ち上がった。



「はい! お願いします!」



 少し緊張しすぎて、声量を上げすぎた。


 背後からクスクスと笑い声が聞こえてきたけれど、あたしは構わず愛香さんの後ろをついて歩いた。


 愛香さんと二人で二階へ上がっていく。愛香さんは衣装部屋と思しき扉の前で立ち止まり、ガチャリと扉を引いた。



「どうぞ」



 入るように促され、あたしはその部屋に足を踏み入れた。



「失礼しま…え、凄い!!」



 あたしは、びっくり仰天しながら目を見開く。


 とにかく凄い洋服の量だった。ガラスにディスプレイされている小物や、帽子、靴までもがズラッと並んでいる。



 ……なんか、ここだけ違う異空間みたい。



 あたしの知らない世界がここには詰まっていた。



「驚いた?」



 愛香さんは指を組みながら首を傾げた。



「…す、凄すぎです…。本当にわたしなんかが、借りちゃっていいんでしょうか…」

「沢山あるから大丈夫よ。気に入ったの見つかるといいわねえ。ふふ」



 愛香さんはハンガーをカチャカチャと動かしながら言った。何だかショップの店員さんみたいだ。



「……でも、こんなにあったら何を着ればいいのかわからないんですけど…」

「相手は、歳上?」
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