Sweet Love
 ――ま、丸っこいってそんな、ハッキリ言わなくったって…。



 内心で小さくショックを受ける。言われた途端、頬が熱くなるのを感じた。



「そんなに落ち込むなよ。…丸っこいのもなかなか可愛いじゃん。ほら、特徴的で良いと思うし――」



 ――萩原くん、全然それフォローになっていません……。



 それから十分弱で書き終えると、萩原くんはこちらに日誌を渡してくれた。



「書き終わった」

「あ、ありがとう。じゃあわたし、職員室行ってこれ渡してくるね」

「うん。よろしく」



 職員室に寄ったわたしは、担任の茂森先生の姿を探す。だが、先生はどこにも居なかった。先生のデスクに置いておけば問題ないだろうと判断したわたしは、日誌を先生の机の上に置いた。


 それから職員室を出て、鞄を取りに行こうと教室へ戻る途中。


 階段に上がる手前で角を曲がった瞬間、思いきりわたしは誰かとぶつかってしまった。



「あ……ご、ごめんなさい」



 ぶつかった衝撃で転んでしまったわたしは、瞬時に顔を上げる。その相手はなんと朱菜ちゃんで、彼女は尻もちをついたまま動けないのか俯いていた。


 彼女は何も答えない。顔を覗き込むと、彼女の目には薄っすらと涙が滲んでいた。



「大丈夫ですか?」



 問い掛けても朱菜ちゃんは全く反応を示してくれない。彼女が立ち上がろうとしたとき、涙がブレザーに零れ落ちた。その瞬間を見てしまったわたしは、彼女にこれ以上言葉を掛けることができなかった。


 朱菜ちゃんは何も言わず、わたしに背を向けると、そのまま廊下の奥へと駆け出す。わたしはそんな彼女を目で追いながら呆然と立ち尽くしていた。


 何かあったのだろうか。


 そのとき、不意に萩原くんの顔が浮かんだ。思い付くとしたら、さっきの告白ぐらいしか思い当たらない。わたしは自分の教室へと戻るために歩き出した。
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