Sweet Love
 全身鏡を見て、あたしはひどく驚いた。


 自分が自分じゃないみたい。何だか、新鮮な自分。見慣れない自分の新たな姿が、鏡越しに映し出されている。


 あたしはそのまま、おずおずと試着室を出た。



「…愛香さん。どうでしょうか」



 愛香さんは一瞬目を見開いたあと、すぐに目を細めながら拍手し始めた。



「裕子ちゃんすっごく、似合ってる!」



 愛香さんの言葉に、あたしはつい照れ笑いを浮かべた。



「ありがとうございます。なんか、…恥ずかしいです」

「恥ずかしがっちゃだめ。ちょっとリビングに下りて、みんなに見てもらいましょ」

「えっ」



 そう言って愛香さんは、強引にあたしの腕を引っ張った。


 そのままリビングに連れられて、三人の視線がこちらへ向けられる。牧原も、麗美も、萩原も目を丸くしながらあたしを隈なく見た。



「す、すごい、裕子可愛い!」



 麗美は興奮した様子でそう言い、あたしはまた照れくさくなる。



「あ、ありがとう」

「萩原くん、裕子すっごい変わったよね?」

「あ、うん」



 愛香さんは、自慢げに笑いながら牧原に話し掛けた。



「どう? ヒデ。可愛らしいでしょ」

「……ああ」



 牧原は、面白くなさそうな顔をしている。


 何だか、牧原だけ麗美と萩原の反応と全然違う…。最初はあたしを見たとき、麗美たちと一緒になって牧原もびっくりしてたのに。



「牧原。あたし、…似合ってるかな」



 白のコットンブラウスを、ふぁさっと広げながらあたしは牧原の前に立った。
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