Sweet Love
 愛香さんは足を止め、こちらを振り返った。



「どうしたの?」



 にこりと笑顔で首を傾ける。



「今日はあの…忙しいのに、すみませんでした。でも、沢山のお洋服見れて楽しかったです。本当に、ありがとうございました」



 あたしはぺこりと深くお辞儀をして、顔を上げた。



「わたしもすごく楽しかった。今度は一緒にガールズトークしましょ」



 愛香さんはあたしに可愛らしいウィンクを投げた。



「はい!」



 今のすごく、キュートだった…。同じ女なのに何故か、ドキッとしてしまう。愛香さんの笑顔を見ていると、何故か気持ちがふわふわ浮いてるような感覚になる。あたしの涙は、もう不思議と止まっていた。



「麗美ちゃんも、よかったら一緒に今度お話しましょう」

「は、はい!」

「翔くんも、麗美ちゃんと仲良くね」



 萩原は少し照れながらも「はい」と呟いた。


 そのあと、愛香さんにもう一度付き添ってもらい、衣装部屋の試着室で着替え終わったあと、あたしはもう一度お礼を言い、玄関で麗美達と愛香さんを見送った。


 あたし達は、再びリビングに戻る。ただ一人、牧原を除いて。



「…裕子、少し落ち着いた?」

「うん。多分…。でも、牧原にちゃんと話してくるよ。あたし」

「わたしも一緒に行く?」

「ううん。大丈夫。萩原とここにいて」

「いや、俺らが行くよ。居間に俺らだけっていうのもなんか落ち着かないし」

「あ、そっか。そうだよね…」

「それじゃ、石田と俺があいつをここに呼ぶから、お前はそこにいて」

「…わかった」



 二人はそのままリビングを出て行き、あたしは大人しくソファーコーナーに体を預けながら、牧原が来るのをしばし待った。
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