Sweet Love
 ――先輩、歩くの早すぎだし。



 あたしは早足で誠二先輩の横に付こうとするが、先輩があまりにも速いスピードなのでなかなか追い付けずにいた。



「先輩! ちょっと待って下さい!」



 少し荒げた声で呼び止めると、誠二先輩はピタッと足を止め、こちらに振り返った。



「あ、ごめん」



 やっと追い付いたあたしは先輩と肩を並べながらしばらく街中を無言で歩いていった。



「せ、先輩。お昼まで時間ありますけど、どうしますか?」



 誠二先輩はなかなかこっちを向いてくれない。


 まさか、露出しすぎてこっち見れないのかな…。



「あ、あのー…」

「…そうだな。時間あるから映画観に行こうか」



 少しの間を置いて、先輩は真顔でそう答えた。



「映画…ですか?」



 まさか、誠二先輩の方から映画に誘ってくるとは…驚きだ。



「うん。映画見たら時間的にも昼飯の時間になってるだろうし」

「…そうですよね」



 映画かあ…。

 なんかデートっぽくていいかも。

 何の映画観るんだろう…。

 やっぱり恋愛系かな。

 映画鑑賞中に手なんか繋いじゃったりしたら、あたしどうしよう…。

 誠二先輩ったら、いやあね、積極的すぎ……!



「裕子さん」

「は、は、はい?」



 突然名前を呼ばれ、つい声が裏返ってしまった。



「何で、一人で笑ってるの」



 やばい。妄想しすぎてあたし、顔に出ちゃったのか。そうなのか。



「…笑ってないです。き、気のせいですよ」



 気を緩めるな。あたし!!



 エヘ、と笑いながらなんとか誤魔化してみたが、誠二先輩は不審そうな顔で、あたしをじっと見つめたまま。
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