Sweet Love
 それからチケットを購入したあと、上映までまだ少し時間があるため、あたしと誠二先輩はコンセッションへと向かった。


 上の看板メニューを見上げながら、長い行列ができた最後尾に並ぶ。


 メニューには、映画を観るには欠かせないポップコーンはもちろん、チュロスやフライドポテト、いももちなんかもあった。



「ポップコーンは絶対買おう」



 先輩はメニューを見上げたまま、まるで独り言のように小さく呟いた。


 笑っているのがばれないよう顔を少し背けたあたしは、先輩が可笑しくて両手で顔半分を覆い隠した。


 笑い声を出さないよう震えながらじっと耐えていると、「ねえ」と横から声を掛けられる。あたしは緩んだ口許を引き締め、先輩の方に振り返った。



「順、もう回ってきたんだけど」

「あ…」



 あたしは開いてしまった空間を慌てて駆け抜け、既にカウンター前まで進んでいた先輩の横に並んだ。



「ご注文、お決まりですか?」



 見た目が若そうな女性の店員が、営業スマイルを浮かべる。誠二先輩はさっそく注文をし始めた。



「ポップコーンのバターしょうゆひとつと、唐揚げと、チュロスと、ポテトフライ。それと…」



 …え。

 待った。何でそんなに注文してるの、先輩。

 食べれるの…?



「あ。…あと、ワッフルもひとつ」



 女性店員が、若干顔を引きつらせて、「以上でよろしいですか?」と尋ねる。



「いや、まだ。裕子さん、飲みものは?」



 ちょっとドン引きしながらもあたしは 、「…アイスティー、で」と答える。



「じゃあ、アイスティーとコーラで。他に食べたいのある?」

「いえ、わたしは大丈夫です…」

「…じゃあ、以上で」



 女性店員が注文内容を復唱し終えると、誠二先輩は「ハイ」と言いながら確認するように頷き、お会計を済ませようとした。
< 162 / 199 >

この作品をシェア

pagetop