Sweet Love
「先輩、わたしも出します」



 お財布を手に持っていたあたしの手を、先輩の綺麗な手が止めた。



「いいよ、ほとんど俺が頼んだやつだし」

「でも、ドリンクくらいは自分で払います」

「ドリンクくらい、いいよ」



 そうこう会話をしてるうちに誠二先輩は、素早くお金を払ってしまう。



「すいません、なんか…。ありがとうございます」

「いいよ、これくらい。…こんなに頼むからびっくりしたでしょ?」



 先輩はそう言ってお釣りを手に受け取り、涼しい顔でフードが運ばれるのを黙って見ていた。



「はい。正直びっくりしました。あの、…もしかして朝ご飯食べて来なかったんですか?」

「いや、朝はちゃんと毎日、休日でも欠かさず食べてるよ」

「…それじゃあ、お昼前でもうお腹空いてるとか、ですか?」

「うん。いつも結構、大食いなんだ。俺」



 誠二先輩が、…大食いだなんて。



 先輩と不釣合いな“大食い”という単語が衝撃すぎて、何度も瞬きを繰り返すあたし。



「もしかして、引いちゃった?」

「い、いいえいいえ! 普段からいっぱい食べてるのに、どうしてそんなに体型スリムなんですか?」

「何でかな」



 先輩は首を傾げながら、腕を組んでいる。



「…多分、太らない体質? なのかもな」



 …維持できるの羨ましい。



 あたしは羨望の眼差しで、先輩の全身を下から上まで見つめていた。


  そのあと、程なくして先輩がほとんど頼んだ大量のフードと、あたし達二人分のドリンクが運ばれてきた。
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